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最高裁判所第一小法廷 昭和38年(オ)1229号 判決 1966年4月14日

上告人 柏態恒

被上告人 国 外一名

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人岡部勇二の上告理由第一点について。

訴訟用印紙の貼用が手数料納付の性質を有するものとしても、法律がこれに関する取扱事務を、裁判権の行使に関連附随するものとして、裁判機関としての裁判所または裁判長の権限に属せしめることを妨げるものではなく、民訴法は、まさにそのような制度を採用したものと解される。従つて、原判決が、訴状等に貼付すべき印紙額についての問題は、個々の具体的事件につきその事件の受訴裁判所または裁判長が司法権の作用として民事訴訟に関する法令の枠内で決めるべき事項であり、行政庁としての裁判所がなしうべき事柄ではない旨を判示したのは正当であり、これを手数料の徴収であるが故に司法行政上の事務とする所論は、肯認しえない。論旨は、貼用印紙額に関する訴訟手続上の措置に対し民訴法所定の救済手段をもつては不十分とし、ことに審級等の定めから上訴による不服申立の途を欠くことを挙げて、本件のごとき訴をもつてする救済の可能を力説し、これを許さない原判決を、法律の適用を誤まり憲法三二条に違反するものと非難する。しかし、不服申立の審級、上訴裁判所の権限等も、憲法は同八一条の場合を除き、これを立法に委ねているのであるから、不服申立方法を欠くにしても、同三二条に違反するものとはなしがたく(昭和二三年三月一〇日最高裁判所大法廷判決、刑集二巻三号一七五頁、昭和三一年一二月一一日同第三小法廷判決、民集一〇巻一二号一五五〇頁、昭和二八年六月二七日同第二小法廷決定、裁判集民〔九〕五七七頁、昭和三二年一〇月一〇日同第一小法廷決定、同上民〔二八〕一二一頁参照)、従つて、全叙のような理由により、東京高等裁判所事件受付係職員が上告人をして反訴状に印紙を加貼させた行為を行政処分とし、その司法審査を目的として司法行政機関たる被上告人東京高等裁判所との間において右問題の解決を求めようとする趣旨の本件訴が不適法であり、その欠缺を補正しがたいものであることは、原判示のとおりである。

なお論旨は、本件予備的請求について控訴を却下した原判決を失当と非難するが、後に説示するように、それを原判決破棄の理由に値するものとはなしがたい。論旨は理由がない。

同第二点について。

本件記録によれば、第一審裁判所は、本件本来の請求を不適法でその欠缺は補正しがたいものと認め、口頭弁論を開くことなく判決言渡の期日を指定したところ、その後に至つて、上告人が新たに国を被告とし損害賠償の予備的請求を追加したものであつて、そもそも予備的請求は本来の請求と同一手続による審判を意図するものであることにかんがみれば、本来の請求が不適法で本案審理に入ることなく却下すべき場合に、予備的請求のみを分離して審理することは認めがたい。従つて、第一審裁判所が右追加の請求を判決言渡期日指定後なされたものであり失当であるとして却下決定したのは、相当といわなければならない。しかして、上告人が右却下決定を不服としてこの点についても控訴した以上、原審は、本来の請求とともにこの点をも判断すべきであり、これより分離して予備的請求を判断すべきではなかつたのである。従つて、原判決が右の点を分離してその控訴を却下したことは、瑕疵たるを免れないのである。しかしながら、原審が本来の請求を不適法と判断した以上、右の予備的請求をも許さないものとした原審の判断は是認しうるところであり、前宗瑕疵はいまだもつて原判決の破棄に値するものではない。それ故論旨は理由がない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判官 入江俊郎 長部謹吾 松田二郎 岩田誠)

上告理由書<省略>

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